紫外線LEDは爬虫類照明界の救世主になれるのか

雑記

近い内に発売されるというLEDに対する杞憂をできるだけわかりやすい様に、小難しい表現を避けて書きました。

この記事はあくまでその道の技術者でもない筆者が昨今のニュースを見て思った事を書いているだけなので、甘い部分や見当違いが含まれている可能性があります。あくまで爬虫類LEDという新しい分野が開拓されるかもしれないという事実に心踊らされ舞い上がってるおっさんが書きなぐった物なのであまり鵜呑みにしないでください。

 

爬虫類向け紫外線LEDが発売されるようです

LEDって本当にすごいんですよね。植物界隈、アクア界隈、ちょっと前まではメタハラが良いだの、蛍光灯には蛍光灯の良さがあるだの、皆騒いでた訳ですが、LEDが普及してからこの手の議論は一気にしぼみました。今でもメタハラ派はどの界隈でも多少は生きているみたいですが、爬虫類界隈以外では、LEDが既に天下を取った、と言っても過言ではないと思います。

寿命がアホみたいに長い、消費電力も控えめ、小型、紫外線を出さない、などなどメリットを挙げればきりがありません。以前は○○に必要な波長が出せない!みたいなデメリットも目立っていたのですが、LEDは今まさに技術革新の真っ只、次々と新技術が開発され、今では弱点を言われていた赤色波長をも十分カバーできるLEDも発売されているそうな。(そっち界隈の照明オタが納得できているレベルかどうか、までは私は知りませんが。)

ただし爬虫類業界ではLEDはそれほど流行ってません。はっきり言ってしまうと紫外線を出すのが苦手だからです。この界隈ではたとえ有用であろうと、紫外線を出せない照明はB級扱いです。ちなみに私は明るさを補うために一部ケージでは植物用のLEDを使用しています。

実際の所LEDは紫外線を出せないこともないのですが、紫外線なんて普通に考えて日焼けの原因になるし、虫を呼ぶので出さない方が良い、もしくは殺菌のためにDNAを損傷するぐらい出す必要がある訳で、生体のために程よい紫外線を出すLEDなんてのは狭い狭い爬虫類業界以外では全くニーズが無いわけです。そんなこんなでごく一部の人以外気にすらしてなかったUVBLEDなんですが、2019年5月、2つのニュースが界隈を騒がせました。

1つ目はこちら

 

 

静岡県の光学測定メーカー「オプトコム」が爬虫類用紫外線LED照明を開発、夏をめどに発売にこぎつける予定、というお話。

このプロジェクトにはiZooや磐田市、静岡県までちょっと噛んでるという話なので少なくともオカルトチックな物ではなく、しっかりとした製品を作り上げようという心意気がビンビンと伝わってきました。オプトコムは光源が人体に与える影響を評価するシステムを開発した実績があり、そのノウハウを爬虫類にも、という事なのだと思います。実際に紫外線が人体に与える影響という話はそのまんまUVBによるビタミンD3合成の話と直接的につながるので、この辺も商品の信頼度を高めるファクターの一つになるのではないかな、と思います。

そしてもう一つはこちら。

 

 

特に詳細な情報が出た訳でもないのですが、どうやら業界大手Zoomedも爬虫類LEDを開発済みで、秋頃に発売するというZoomed Japanからのツイート。海外のサイト等を見る限り具体的に開発済みというアナウンスが出たのはおそらく初めてだと思われます。僕が知らないだけかもしれませんが。

業界初、というのは一番最初に発売した所になるんじゃないかな、と思うのですが、この場合どうするんでしょうね。

 

注目して欲しいポイント

これからはLEDの時代、となる前にこういう事を考えながら爬虫類LEDの進捗を見守って欲しいなと思い、3つのポイントにまとめてみました。

 

そもそも省エネになるの?というお話

LEDと言えば省エネ!たっかいたっかい電気代もこれで解決!と本当になるでしょうか?

LEDは確かに変換効率が高く、目的の波長の光だけを求めるのであれば最高効率と言っても良いかもしれません。この照明で使われている紫外線LEDの変換効率がどのぐらいであるか、現時点では不明なためなんとも言えません。(私の知識では深紫外線LEDの効率は極めて低く、90%以上は熱損失として器具から流れ出ます。)

海外の重度の照明オタからは紫外線LEDの効率なんて蛍光灯の10分の1ぐらいだけど、本当に改善できてるの?そんな技術革新があったなんて聞いたことないけど、と突っ込みが入ってました。その辺は日本企業の底力が見られるかどうか、期待です。

実際に紫外線と赤外線の放射がほぼ不要、もしくは邪魔者である一般照明、アクアや植物界隈に置いてはほぼ可視光のみを高効率で照射するLEDは非常に優秀です。しかし爬虫類においてはどうでしょう。特に昼行性トカゲにおいてはUVBもUVAも赤外線も可視光も全てが必要な要素です。

光源は同じ種類でも数値がマチマチなので比較するのが難しいのですが、例えばLEDがエネルギーを30%程可視光に変換できる高効率の物であっても、69%程は器具からの発熱という形で失われていきます。例をもう一つ、セルフバラスト水銀灯は光への変換効率はLEDに大きく劣りますが、赤外放射、紫外放射、可視光と爬虫類飼育に必要な要素を抜いていくと大体20~30%程の損失になります。爬虫類ケージを一つの系として考えるとセルフバラストは省エネじゃない、と言えるでしょうか?

様々なエネルギーが活用されるのが爬虫類ケージというの系です。省エネという概念を考えるには、ただ効率よく光を発するだけでなく、この系で必要になるエネルギーの総量をどう効率よく満たしていくか、という話になると私は考えています。LEDは必要なエネルギーを満たすパーツの一つとして優秀な役割を果たせる可能性は0ではありませんが、省エネになるかと言われると現状では疑問符が2つ3つついてしまいます。なぜなら結局の所UVBを効率よく照射したとしても、UVAや可視光の照射は別に必要ですし、何より最もエネルギー(電気代)を消費する温度調整にほとんど影響を及ぼさないからです。

排熱をそのまま保温のためにケージに入れ込んで滞留させれば、エネルギーとして活用もできる可能性もあります。エネルギーを溜め込みすぎると夏場はオーバーヒートの問題もありますし、中には熱を嫌がる生体もいるので、この辺は一概にこういうものだ!と言い切れない部分もあるんですけどね。紫外線LEDをどう扱うべきか、この辺も実際に使ってみた時の楽しみに取っておきます。

 

器具コストは抑えられるの?

LEDは低コストで運用できるのでお得という話になりますが、結局本体がバカ高かったら元を取れるとかそういう事以前の問題になります。アクア界隈では現在一部の高級なLEDは高いですが、中国製が広く普及しているので、本体の価格も安めにまとまって来ています。しかし光の波長が短くなればなるほど、LEDのお値段は高くなります。

私が何となく300nm前後の波長の光を出せるLEDをを漁って、現実的な運用を考えるとどのぐらいの値段になるか、というのを色々計算してみた事があるのですが、どう頑張っても10万円を下回る見積もりを出すことができませんでした。

値段とスペックの折り合いがついている状態でこの夏、この秋に商品が投入されるのか、この辺も期待です。

 

LEDの長寿命を生かせるの?

LEDは熱とは無縁、というイメージを持つ方も多いと思いますが、先程も書いた通り、LEDは器具から熱が結構な量発生します。この熱が実は曲者です。赤外放射という形で熱を吐き出せない分器具に熱が残りますので、別の方法で冷却する必要があります。この熱の問題を解決できないと、LEDの寿命は著しく低下します。

オプトコムさんの試作品?はLEDなのに大きめ、かつ金属製の箱に包まれてますが、これはヒートシンクとしての役割も兼ねての物なんじゃないかな、と思ってます(違ったらごめんなさい)。排熱に関しても一工夫が見られます。とにかくUVBを照射できるレベルの高エネルギーLEDを10時間以上点灯させる必要がある訳ですから、これを冷却しきるのは結構な無理難題でしょう。どの様にクリアしているのでしょうか?

 

総評

海外の照明コミュでこの話題を投稿した所、多くの人は興味を示した中、少数のおっさん勢はこの話題については私とほぼ同様の理由で懐疑的でした。

果たしてLED照明は爬虫類業界の救世主になれるのか。ここ2,3年でUVBLEDに関して様々な議論が行われて、結局難しい、という意見に落ち着く事が多く、そこから幾年も経たずいきなりの商品化ですからね。それだけにどんなもん作ったんだろう?という期待半分、不安半分、といった所です。

また同時期に別の開発元から情報がリリースされた件についても気になります。どちらも独自開発である事が予想されますので、値段も仕様もまるっきり別の物になるでしょう。爬虫類器具に関しての練度はZoomedに軍配が上がりますが、和製爬虫類照明に関しても期待大です。Zoomedは時々ピントはずれな器具を投入してくる事もありますので。

 

現時点ではよっぽど手を出しやすいという値段でも無い限り、発売直後の爬虫類LEDに手を出すのはオススメしません。ある程度評価が出てから手を出しましょう。

無論、私は評価のためにおそらく購入しますが・・・10万ぐらいしたらどうしようと今から戦々恐々としてます。

 

追記

 水俣条約関係で2021年から水銀灯や蛍光灯は作れなくなるから必然的にLEDの時代になる!メタハラ?しらんがな、という意見も聞こえて来ますが、水俣条約では生物用の紫外線灯は特殊用途のとしての例外が適用されます。

具体的にはこちらこちらを参照してください。

そんなこんなで基本的に爬虫類用の紫外線蛍光灯やセルフバラストに関しては直接的には影響はありません。しかし一般用途の製品のラインが止まる事で特殊用途の照明も今後割を食う、という可能性は大いにあるので間接的には影響があるかもしれません。

つまりは現時点ではどう転ぶかわかりません、という事です(2019/05/08)

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