トカゲと紫外線の話(UVBとUVIについて)

照明論

日本でもST-7が販売されるとかされないとかちょっとだけ話題になってましたが、如何せんこの計器がどういう意味があるのか、販売元までそれほど理解して物を喋っていないように見えたので、今一度説明したいと思います。

 

※この記事は個人的認識も多く含まれています。

 

計器のお話から

紫外線測定器は色々ありますが、規格がめちゃくちゃなので数値の比較はほぼ意味を成しません。そんな中で以下の2種はそれなりに普及しました。

まずはSolarmeter6.2を元にした紫外線強度計。これはUVBのみ(厳密にいうとUVA帯域もちょっとだけ)を測定する事ができる計器でございます。

私が把握している物以外でもあるみたいなんですが、主に出回っているのは3つ。

本元のSolarmeter model 6.2

 

 

爬虫類用に(外見のみ)改良されたmodel 6.2R

zoomedプリントのST-6

この3つは同じ性能ですが、後に行くほど値段が高くなります。基本的にzoomedオタ以外は一番上の物でOKです。

 

もう一方はSolarmeter6.5を元にした計器。こちらはUVIを測定する事ができます。

主に市場に出回っている物は

 

本元のSolarmeter model 6.5

爬虫類用に(外側のみ)ブラッシュアップされたmodel 6.5R

zoomedプリントのST-7

こちらも先程と同様、性能は一緒ですが、下に行くほど高くなります。デザインにこだわりがある方以外は6.5を購入するのがベターです。

 

UVB測定について

さて、この二種の計器ですが、現在ではsolarmeter6.2タイプでは無く、6.5タイプが主流であるという事です。

トカゲの飼育には日光が必要で、日光を浴びないとくる病(今ではくる病を含めてMBD・代謝性骨疾患として扱われる事が多い)にかかる、日光には紫外線・UVBが含まれていて、それが皮膚に当たることでビタミンD3が合成され、カルシウムの吸収を助ける・・・

というのがまぁトカゲ飼育の常識なはずです。(経口摂取でどうにかなるから・・・という議論については一度端に置いておいてください。)

UVBが強けりゃ良い照明、太陽が最強だけど、どうせ人工照明じゃ追いつけないし、要はUVBが強ければ強いほど良いんでしょう?という風潮は割と最近まで続き、計器に関してもUVBに区分されている波長域をすべて計る6.2が使われていました。

6.2の特徴ですが、計測波長は280~320nmで、UVBに加えてほんの少しUVA帯域に足を踏み込んで測定します。315~320nmは波長の長さにして5nm程度ですが、この5nmの範囲は結構無視できないレベルの線量が入りますので、基本的に純粋なUVBよりかなり多めの数値を取ります。

とまぁ細かい話は置いといて、UVB総量のみを取るのは実は大きな問題があります。

UVBが日焼けを起こす力はUVAの1000倍、なんて話はちょくちょく界隈外からも聞こえる話題ですが、例えば同じUVBでも310nmの紫外線と290nmの紫外線ではビタミンD3の生成量がまるっきり違います。以下の2つの例を見てください。

図A

図B

手書きですみませんが、便宜上という事でよろしくお願いします。

図Aで示す波長を持つUVBと図Bで表したUVBは、6.2で測った数値に違いは出ませんが(厳密に言えば計器の仕様上差は出るのですが話を円滑にすすめるために無視します)、ビタミンD3を生成させる作用量に関しては大きな差があります。310nmのUVBと300nm、290nmのUVBでは作用量が約10倍の差がありますが、UVB総量はあくまで波長を積分した結果ですので、波長による作用量の違いを考慮していないためです。

またもう一つ別の問題もあります。太陽光のスペクトル内からUVBを切り出してみてみますと、UVBの中でも300nm以上が大半を占めますが、しかし爬虫類用の人工照明は300nm以下の波長も結構な割合で含んでいたため、当時の環境で太陽光と同程度のUVB環境を作った場合、よりラジカルである低波長UVBの照射量が多くなり、結果的に生体にダメージを与えるケースが多く見られました。

雪目なんかも昨今ではそこまで見ない症状ですが、10年ちょい前のトカゲはよく泣いてたような気がします。これは当時の蛍光灯の問題もあったのですが、UVに関する理解不足もあった様に思います。

 

UVIを計る意味

そんなこんなでUVBレンジのみをただ機械的に測定する事に疑問を感じていた学者様達はUVBでは無くUVIを測定しはじめました。

UVIというのは簡単にいうと、どのぐらい肌にダメージを与えるか、という紫外線強度の指標です。あくまで人間用に作られた指標であり、WHOでも採用されている由緒ある物です。

先程も記載した通り、同じUVBでも波長により性質は大きく変わります。そういう波長の影響力を考慮した上で紫外線の強度を組み込んで算出されるのが紅斑紫外線量であり、さらにそれを見やすい数値として丸めていったのがUVI(ユーブイインデックス)です。

手計算で求める事はないと思いますが、一応こんな感じで算出されます。

 

 

この皮膚へのダメージ云々というのは、ビタミンD3を生成する量を示す曲線と非常に似た動きをするのがわかっています。このサイトでは何度か登場していますが、次の図を見てください。

 

引用:国立地球環境研究センター

 

おおよそ一致しているのがよくわかります。つまるところ紅斑紫外線、UVIを追えばビタミンD3の生成量を追うことができ、結果的にトカゲによりピッタリな照明環境を追求できるのではないかというのがUVI測定の意味であり、6.5がメインになったのはこういう背景があった訳です。

 

UVI

そんなこんなで、今後爬虫類飼育者の中で紫外線を測りたい、という人がいるのであれば断然UVI計をオススメする訳です。

UVIを採用する非常に大きなメリットは2つあります。

世界各地のUVIというのはとても簡単に手に入るデータであり比較が行いやすいというのが1つ、もう1つは○○を飼うのにどのぐらいの紫外線が必要か、という検証・調査データも比較的信頼度の高いレベルで手に入れることができる点です。

2010年辺りからUVIを試用した調査が始まり、現在ではBIAZAにより254種に関するデータベースが作成されてます。興味がある方はこちらからPDFをささっと保存し、紙に出力しましょう。

ファーガソンという学者様がUVIの帯域を夜行性からチャクワラトゲオアガマレベルまで、4つのZoneに分けてリスティングを始めました。このゾーンは学者様の名前から取ってファーガソン(ferguson zone)と名付けられております。

日本ではなぜか目にしない、ファーガソンゾーンで検索してもピクリとも反応しないのですが、照明・紫外線を考える上では非常に有益な話なので、今後もできる限り採用していくべきだと思います。

 

まとめ

個人的な意見ですが、ファーガソンゾーンはあくまで現地環境等の調査で得られた数値をベースにして出されている物であって、これだけUVIがあればMBDにかからない!という物ではありません。しかし今後生理学的アプローチによってこの話題が深められるとは個人的には到底思えません。

ファーガソンゾーンのリスティングは紫外線論争の落とし所としては完成形なんじゃないかとも思ってます。

UVIは比較しやすい指標ですし、何より人間も関わる数値ですから、今後計器のブラッシュアップもそれなりに期待できます。他計器に関してのリサーチがまだまだといった感じですので、今後も何かあれば追記していきたいと思います。

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